2019年度アクチュアリー試験 体験記
私は昨年度,初めてアクチュアリー試験を受験しました.
科目は数学・損保の2科目です.初めてなので(受験料も高いですし)控えめな科目数にしました.
結果は嬉しいことに2科目とも合格,研究会員に仲間入りです.
受験の前には数多くの先輩方の合格体験記・勉強法を読ませていただきました.これらは役立つ情報ばかりで,合格の1つの要因になりました.
そこで,これからアクチュアリー試験(特に数学・損保)を受験する方に少しでも役立てればと思い,私の体験記を残したいと思います.
ただし,ここに書いてある内容はあくまで参考に留めて,自分に合った勉強方法を探してみてください.
1 教科書・参考書
使用した教科書・参考書を紹介します.ここでは各書の特徴を書き,具体的な使い方は2章に回します.
1.1 数学
1.1.1 「弱点克服 大学生の確率・統計」 藤田岳彦
アクチュアリー受験では非常に有名ですね.アクチュアリー試験の数学の基本を抑えるのにはもってこいです.演習問題が多く,演習を重ねながら解法を学ぶことが出来ます.
確率分野はこれ1冊で十分と言えます.ただし,統計分野・モデリング分野は記述が少なく,これだけでは合格できません.
1.1.2 「モデリング」日本アクチュアリー会
モデリング分野のアク会公式教科書です.モデリングの問題はこの教科書をもとに出題されるので,購入は必須になるかと思います.
数学100点満点のうち,モデリングの問題は15-20点分出題されます.合格が60点以上ですので,モデリングの問題が解ければ合格がグッと近づきます.そしてモデリングは比較的簡単な問題が多いです.
1.1.3 「過去問ワークブック」アクチュアリー受験研究会
こちらは書籍ではなく, アクチュアリー受験研究会が作成したPDFです.内容は,アクチュアリー試験の過去問30年分を分野別に並び替えたものです.
各問には,難易度(★,★★,★★★)がついており,初めは簡単な問題から手を出すことが出来ます.最終的には★★★の問題も解けるようにしたいのですが.
私が合格できたのは,間違いなく「過去問ワークブック」のおかげといっていいでしょう.具体的な使い方は2章を御覧ください.
1.1.4 「統計学」久保田達也,国友直人
この本には,確率・統計・モデリング分野のより理論的な話が載っています.「弱点克服 大学生の確率・統計」に載っていない内容も多くあります.
ただし,私はこの本はほとんど使いませんでした.なぜなら,様々なサイトに解法や公式のわかりやすい解説が載っているからです.アクチュアリー試験の合格だけを考えれば,参考書は無くても問題ないと思います.
もちろん,理論からしっかりと学びたい方は読んで損はありません.数学書としてはしっかりとした内容の本になっています.
ただし,この本は誤植が多いです(笑).久保田先生のHPに誤植一覧がありますので,購入した方は参照してください.
1.2 損保
1.2.1 「損保数理」日本アクチュアリー会
アク会公式教科書です.この教科書をもとに出題されるので,購入は必須になるかと思います.分厚く内容が多いですが,章ごとにテーマが異なっていて,暗記メインのテーマもあればゴリゴリ理論のテーマもあります.人によって得意な分野が分かれる印象です.
1.2.2 「モデリング」日本アクチュアリー会
こちらは数学で紹介した「モデリング」と同じものです.損保の試験でも,モデリングの知識を使います.これが,数学と損保を一緒に受けたほうが良いと言われる理由の1つですね.
1.2.3 「過去問ワークブック」アクチュアリー受験研究会
pre-actuaries.comこちらもアクチュアリー受験研究会が作成したPDFです.内容は数学と同じく,アクチュアリー試験の過去問15年分(+α)を分野別に並び替えたものです.
各問には,難易度(★,★★,★★★)がついており,初めは簡単な問題から手を出すことが出来ます.最終的には★★★の問題も解けるようにしたいのですが.
私が合格できたのは,間違いなく「過去問ワークブック」のおかげといっていいでしょう.具体的な使い方は2章を御覧ください.
2 勉強方法
私がどのような勉強をしたのか,時系列で見ていきます.
私は部活動に所属していたので,10月6日頃まではまったく勉強できていませんでした(遅すぎです).アクチュアリー試験は12月9日・10日でしたので,ちょうど2ヶ月間しかありません.
ただし,私はほとんど大学の授業を取っていなかったので,1週間のほとんどを勉強時間に当てることが出来ました.1日8時間勉強して,2ヶ月間で400時間(1科目200時間)を目指して勉強し,なんとか合格にこぎつけたという印象です.
でも,圧倒的な勉強時間不足でした.これから受験する方は余裕を持って勉強を始めて,より確実な合格を狙ってください.
2.1 数学
10月7日から,まずは「弱点克服 大学生の確率・統計」を読んで,確率・統計分野の基本的な内容を理解しました.演習問題は2周ほどして,すべて解けるようになっていたと思います.
10月26日から,「過去問ワークブック」を使い始めました.ワークブックには30年分の過去問が分野別に収録されています.まずは確率・統計分野の難しくない問題(★,★★)から解いていきました.解いていくうちに,解法を体で覚えていくことができます.数学の試験では似たような問題が何年も出題されているので,過去問が解けるようになることは非常に重要です.2周目は,見てすぐ分かるような問題は飛ばして,難しい問題(★★★)も含めて解いていきました.ここまでで,確率・統計分野の問題は最低1回は解いたことになります.
11月12日から,「モデリング」を読みながら損保の勉強を始めました.試験まであと1ヶ月なのに,まだ教科書が読み終わっていない状況です.といっても「モデリング」の試験範囲は少ないので,読むだけならすぐに終わりました.
11月17日から,再度「過去問ワークブック」のモデリング分野を解き進めました.このころは損保の勉強をメインでやっていたので,数学の勉強時間はあまり取れませんでした.それでも,モデリングの問題は最低1回は解いて,最後にすべての範囲を1周して試験を迎えました.最終的に,「過去問ワークブック」の問題は1-3回解いたことになります.
2.2 損保
上述のとおり,損保の勉強は11月12日から始めました.試験まで残り1ヶ月だったので,かなり焦っています.
まずは「損保数理」を読むところから始めます.「損保数理」は章ごとにテーマが異なるので,苦手な章は飛ばして読んでいきました.
11月21日から,「過去問ワークブック」を解き始めました. 「損保数理」を読みながら解いていった感じです.数学が30年分に対して,損保は15年分と半分ですが,とにかく時間がなく,「過去問ワークブック」の問題は1-2回解いただけで終わってしまいました.
2.3 まとめ
以上の勉強時間をまとめると,このようになります.
これを見れば分かるように,勉強時間のうち半分は教科書,半分は過去問演習をしていました.アクチュアリー試験では似たような問題が必ず出るため,「過去問ワークブック」を活用することは非常に有効です.
以上,私の合格体験記でした.これからアクチュアリー試験を受ける方に少しでもお役に立てれば幸いです.余裕をもった試験勉強を心がけましょう.