宇宙の始まり、その確率。

確率論専攻がアクチュアリーを目指す

あつ森のカブの期待値は約2倍!? 期待値を計算してみた

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いま大人気の「あつまれ どうぶつの森」には,「カブ」というシステムがありますね.

この「カブ」は現実世界の「株」をマネているもので,そして非常に儲かるのです!

今回は,「カブ」運用による期待値を具体的に求めていきたいと思います!!

(もし他の人が先にやっていたらごめんなさい!!)

 

注意

以下は「hyperT'sブログ」様に掲載されている解析データを使用しています.そういった情報がNGな方は閲覧をお控えください.

また,あくまで期待値ですので,不利益を被っても責任は負いません.破産にはお気をつけください.

hyperts.net

 

まずはカブの設定をまとめます(計算に必要なもののみ).

  • 1カブあたり \alpha ベルで,日曜の午前に購入できます(ベルは通貨単位).
  • カブ価は毎日の午前午後に変動します(カブ価が切り替わるのは月〜土の午前午後で12回ある).
  • カブは土曜午後までに売却する必要があります.
  • カブ価の1週間の変動パターンは4つあります(それぞれの詳細は後述).
    • 波型
    • 減少型
    • 跳ね小型
    • 跳ね大型
  • カブ価の変動パターンは,前週の変動パターンに依存して確率で決まります.

今回は,プレイヤーが理想的なカブ運用をする(1番カブ価が高くなったと思われるときに売却する)と仮定して,計算したいと思います.

カブ価の変動パターンについて,もう少し詳しく見ていきましょう.

波型

カブ価が買値付近を上下する.

買値 \alpha ベルに対し最大 1.4\alpha ベルまで上昇するが,1番カブ価が高くなる日は予測できない.

今回はこの変動パターンのとき,1.2\alpha ベルで売却すると仮定する.

減少型

カブ価が買値から単調減少する.

買値 \alpha ベルに対し,カブ価が切り替わるごとに3%~5%減少する.

跳ね小型・跳ね大型も最初は同様の値動きをするので,木曜午前ごろまでカブを保有しないと,減少型であるとは判断できない.木曜午前までにカブ価は7回切り替わるので,それまでに平均28%減少する.

今回はこの変動パターンのとき,0.72\alpha ベルで売却すると仮定する.

跳ね小型

最初は減少型と同じだが,ある日にカブ価が高騰する(小).

買値 \alpha ベルに対し,カブ価が 1.4 \alpha \sim 2\alpha ベルまで高騰する.

そして,カブ価が最大になる日はほぼ予測できる.

今回はこの変動パターンのとき,1.7\alpha ベルで売却すると仮定する.

跳ね大型

最初は減少型と同じだが,ある日にカブ価が高騰する(大).

買値 \alpha ベルに対し,カブ価が 2\alpha \sim 6\alpha ベルまで高騰する.

そして,カブ価が最大になる日はほぼ予測できる.

今回はこの変動パターンのとき,4\alpha ベルで売却すると仮定する.

そして,変動パターンは以下のように,前週の変動パターンで確率で決まります.

先週 \ 今週 波型 減少型 跳ね小型 跳ね大型
波型 20% 15% 35% 30%
減少型 25% 5% 25% 45%
跳ね小型 45% 15% 15% 25%
跳ね大型 50% 20% 25% 5%

以上が,カブ運用の設定になります.ここから数学的な話を始めましょう!!

 

まずは,前週の変動パターンがわかっているときの今週の期待値(条件付き期待値)を計算してみます.これは簡単で,例えば前週が波型だったときは,

1.2\alpha \cdot 0.20 + 0.72\alpha\cdot 0.15 + 1.7\alpha\cdot 0.35 + 4\alpha\cdot 0.30 = 2.143 \alpha

となります.同様に計算すれば,

  • 前週が減少型だったとき 2.561 \alpha
  • 前週が跳ね小型だったとき 1.903 \alpha
  • 前週が跳ね大型だったとき 1.369 \alpha

が得られますね.簡単に言えば,減少型の翌週はいっぱい儲かる,跳ね大型の翌週はあまり儲からないってことです.波型と跳ね小型の翌週の期待値はあんまり変わらないんですね.

 

では次に,前週の変動パターンがわからないときの期待値を求めます.例えば,これから10週連続でカブを購入するときの期待値なんかは,こっちのほうが便利です(前週のパターンがわからないので).

まず,定常状態(十分時間が経った後)に各パターンがどのくらいの確率で出現するかを求めます.このとき,各パターンの出現確率は均衡しているはずです(十分 n が大きくなれば,n 回目と n+1 回目の各パターンの出現確率は同じ).

よって,定常状態における波型,減少型,跳ね小型,跳ね大型の出現確率を x,y,z,w とすれば,以下の式が成り立ちます.

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これを解けば,

\displaystyle x=\frac{4530}{13082},y=\frac{1931}{13082},z=\frac{3385}{13082},w=\frac{3236}{13082}

が得られるので,定常状態での各変動パターンの出現確率は,

  • 波型 34.6%
  • 減少型 14.8%
  • 跳ね小型 25.9%
  • 跳ね大型 24.7%

となります.したがって, \alpha ベルで買ったカブの期待値は,

1.2\alpha \cdot x+0.72\alpha\cdot y+1.7\alpha\cdot z+4\alpha\cdot w \approx 1.95 \alpha

となります.すなわち,理想的なカブ運用では約1.95倍になることが期待されています!!

例えば,カブを毎週100万ベル分,10週連続で買うとすれば,期待値は1950万ベル(!!)ということですね!!すごい!!

まとめ

カブは必ず儲かる!!

理想的なカブ運用による期待値は約1.95倍!!

意外と跳ね大型になる確率が高い(24.7%)!!

前週がどのパターンであっても,翌週は(期待値的には)必ず儲かる!!

現実世界の株と混同しないようにご注意を(笑)

ちなみにこれは,アクチュアリー試験「損保数理」の無事故割引の計算と同じです.あつ森しながら勉強できるのは良いですね(?)