損保数理の各章ごとの感想
損保数理のテキストは各章でテーマが異なっていて,人によって理解しやすい章と理解しにくい章に分かれると思います.例えば,私のように数学科出身の方はバリバリ数式を扱う章のほうが理解しやすいでしょうし,暗記が得意な方は単語や公式がたくさん出てくる章のほうが得意かと思います.
そのため,これから損保数理を勉強する方に向けて,各章の内容と特徴について書いていこうと思います.
- 損保の勉強の進め方について
- 第1章 損害保険料率の基礎知識
- 第2章 クレームの分析
- 第3章 経験料率
- 第4章 クラス料率
- 第5章 支払備金
- 第6章 積立保険
- 第7章 保険料算出原理
- 第8章 危険理論の基礎
- 第9章 再保険
- 第10章 リスク評価の数理
- まとめ
損保の勉強の進め方について
最初に書いたように,損保は各章でテーマが異なります.したがって,わからない章があっても次に進むことが出来ます.理解しやすい章を先に終わらせてから戻ってくるのが,1番効率の良い勉強方法かもしれません!!
過去問を見ると,「この章からは(ほぼ)毎年この問題が出てる!!」ってことに気づくかと思います.毎年出てるような問題をちゃんと60点分とれば合格出来るので,ぜひ過去問演習を重点的にやってくださいね!!
私の損保の詳しい勉強法は以下の記事で紹介しています.
第1章 損害保険料率の基礎知識
第1章ではまず最初に,損保の基本的な仕組み・単語の解説がなされています.第1章で必ず押さえておきたいのは,エクセス・フランチャイズの計算ですね.エクセス・フランチャイズと同じような計算を第9章「再保険」でもするので,必ず理解しておきたいです.
最近の試験では◯×問題(正しい選択肢の組み合わせを選ぶ問題)がありますが,第1章の知識からも出題されることがあります.例えばこんな問題ですね.
当年度アーンドプレミアムおよび当年度インカードロスはそれぞれ次式で算出される.◯か×か.
当年度アーンドプレミアム = 当年度リトンプレミアム + 前年度末未経過保険料 - 当年度末未経過保険料
当年度インカードロス = 当年度ペイドロス + 前年度末支払備金 - 当年度末支払備金
答え : × (当年度インカードロスの「前年度末支払備金」と「当年度末支払備金」が逆)
比較的簡単な問題が多いので,確実に正解できるようにしたいです.
第2章 クレームの分析
この章では,クレーム総額についての問題が頻出です.すなわち,個々のクレーム額が〇〇分布に独立に従い,クレーム件数が◯◯分布に従うとき,クレーム総額は?みたいな問題です.計算量が多いためにミスが起きやすいので,過去問をひたすら解いて計算力を鍛えておくことをオススメします.
でも,この手の問題は計算さえすればいい(変な考え方を必要としない)ので,私は結構得意でした.
第3章 経験料率
ビュールマン理論やら,有限変動信頼性理論やら,ベイズ推定論やら,よくわからない理論・単語がたくさん出てきます.ですが,これらの問題はパターンで解けてしまうので,公式を覚えれば簡単に解けちゃいます(一部を除く(笑)).
第3章の内容で私が好きなのが,「無事故割引」の問題です.推移確率行列を使って行列計算をする問題なのですが,こちらもただ計算するだけなので,確実に得点源に出来ます.まだ経験料率を勉強したての方は,教科書「損保数理」の練習問題3.1.1を解いてみてね!!(あれ…?これアク会じゃ…???)
第4章 クラス料率
第3章に続き,料率のお話です.今度はBailiey-Simon法,Minimum Bias法,Jung法など,◯◯法がいっぱいで出来ます(ごっちゃごちゃ).ただこちらも第3章と同じく,公式に当てはめるだけの問題が多いです.必ず得点源にしましょう.
また,一般化線形モデルの問題は毎年良く出ます.一般化線形モデルは理論的かつイメージしやすいので,数学が好きな方は解きやすいかと思いますね.
第5章 支払備金
電卓をハイパー使う問題が出ます(笑).ロスディベロップメントの問題は毎年出てきているので,必ず対策しておきましょう.使う表にはいろいろな種類(累計支払保険金・普通支払備金・累計発生保険金 など…)がありますので,それぞれ何が違うのか理解しておくのが大切です.
過去問を解くことで,電卓の計算スピードもあげることが出来ます.ぜひ過去問演習を重ねてください!
(余談ですが,2019年度の試験の支払備金の問題はひっかけがあります.私も友人も引っかかっています…笑)
第6章 積立保険
私が1番嫌いな章です.なぜ嫌いかといえば,記号が大量に出てくるからですね.暗記が苦手な人は,かなり辛い章だと思います.
幸いなことに,積立保険の計算問題は毎年1問程度のような気がします.しかもそんなに難しい問題ではないので,教科書を理解しておけば解けるはずです.でも私はどうしてもこの章が受け入れられず,本当に簡単な問題しか解けないレベルでした.
第7章 保険料算出原理
第6章が暗記メイン(?)だったのに対して,この章はバリバリ理論な内容ですね.保険料算出原理に求められる性質の表(教科書7-6ページ)は超大事ですが,暗記するだけでなく,ちゃんと理由をセットにしておくと良いですね.
この章の問題は計算するだけのものが多く,確実な得点源としたいです!!
第8章 危険理論の基礎
第7章に続き,バリバリ理論の内容です.中でもオペレーショナル・タイムや破産確率が頻出です.大学の確率論を学んでいる人は,非常にアドバンテージがある章かなと思います(停止時刻とか出てきますね!!).
第9章 再保険
再保険はよく,「保険の保険」って言われます.内容は第1章のエクセス・フランチャイズの計算と近いものがありますね.
ただ,第8章の破産確率との関連があるので,問題はかなり複雑です.ちゃんと問題設定を理解してないと計算ミスが多発します.過去問演習を繰り返して, 複雑な問題にも慣れていきたいですね.
第10章 リスク評価の数理
この章は平成23年度から追加された新しい内容ですね.今までとは一風変わった,理論的な話が多いです.ただ,コピュラやリスク尺度の問題は公式に当てはめるだけなので,得点源に出来ます.
極値理論はかなり厄介かなぁと思います.全部理解するのは骨が折れます.でも,教科書を読んでいれば解けるような簡単な問題も出題されています.
まとめ
以上をまとめると,こんな感じですね.
自分の中で,「この問題は得点源にする!!」と決めていって,その範囲が広がるように勉強するのが良いと思います.60点取れれば合格なのですから.
そして,守備範囲を増やすために大事なのが過去問演習ですね. 私が過去問をどのように使っていたかは↓の記事を御覧くださいませ.